クオリティ・スクール訪問記

クオリティ・スクールとは

▲カープールの時間、先生が総出で出迎える

グランド・トラバース・アカデミー(以下GTA)はミシガン州北部トラバース・シティにある「クオリティ・スクール」の一つだ。
クオリティ・スクールとは、米国の精神科医であるウイリアム・グラッサー博士が提唱する選択理論を学校運営に応用した学校で、グラッサー協会に認定された正式なクオリティ・スクールは全世界に21校ある。また、クオリティ・スクールを目指す取り組みをしている学校は250校以上あると言われている。

クオリティ・スクールとしてグラッサー協会から認定されるためには、生徒の学業成績が優秀であることはもちろん、生徒の問題行動も2年以内にほとんどゼロであるなど、高い基準をクリアする必要がある。

GTAは2000年に設立された、プレ・スクール(保育園)から高校までの一貫校であり、2005年にクオリティ・スクールに認定されている。全校生徒1150名に対し、150名もの入学待ち生徒がいる人気登校時間。生徒たちが毎朝保護者に車で送られて登校し、先生に迎えられる「カープール」という時間だ。元気に登校してきた生徒たちは、初めて見る私たちにも"Hello"と声をかけ、ドアを開けて中に促してくれた。
校内はとても整頓されており、落書きもなければ、ゴミも落ちていない。誰もが礼儀正しく挨拶をし、いわゆる「若者言葉」のような下品な言葉遣いは一切聞かれない。アルコールやドラッグが問題化するアメリカの一般的な学校と比較すると、生徒のこうした振る舞いは驚異的であると言えるだろう。

我々を案内してくれたキャシーさん(教育長秘書)に生徒たちが礼儀正しい理由を聞くと、選択理論をきちんと理解しているからだという。選択理論では、『自分の行動はすべて自分が選択している』と考えるため、「ついうっかり」という言い訳はできない。
自分の言動はすべて自分が責任を取る必要があると生徒たちは選択理論を学ぶ中で理解しているのだ。生徒たちにこうした環境をどう思うか聞くと、「決して窮屈なことはなく、勉強に集中できる安心な環境だ」と答えてくれた。

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もっと選択理論について知りたい方

グラッサー博士の選択理論 - 幸せな人間関係を築くために
夫婦・親子・教師と生徒・マネジャーと従業員との上質な人間関係のあり方を明解に説き明かす。

幸せを育む素敵な人間関係
米国の精神科医、ウィリアム・グラッサー博士が提唱する選択理論を分かりやすくまとめた本書。

用語紹介

自己評価(self-evaluation)
自己評価とは、「他人によって評価される他者評価に対して、自分の学習、行動、性格、意欲などを自分自身で評価すること」である。グラッサーはデミングの「人は他人を評価してはならない」という言葉の重要性に着目し、これを少し言い換えて「人は他人を公に評価してはならない」と言っている。「人間関係を破壊せずに行動...
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